冷徹な楽観主義-『2015 長谷川慶太郎の大局を読む』
私、楽観主義の味方です
『オプティミストはなぜ成功するか』という本がありましたが、成功者は往々にして楽観主義者です。
『2015 長谷川慶太郎の大局を読む』の著者である長谷川慶太郎さんも、特に日本については楽観主義と言って良いでしょう。
ただし、データや情報を提示し、そこから結論に持って行く論理には確かな説得力があります。
『大局を読む』シリーズは毎年発行されていますが、その辺が人気の秘密なのかもしれません。私は今年初めて購入してみましたが、買って損は無い本だと思います。
同じ情報からでも違う景色が見える
長谷川慶太郎さんには軍事専門家としての顔もあるらしく、インサイダー情報を紹介しながら、北朝鮮、ウクライナ、中東等についてもかなり思い切った予想をしています。
中国海軍がリムパック(環太平洋合同演習)に参加した理由とその結果について、マスコミ情報だけでは分からない事も書いてあります。
経済についても軍事についても、マスメディアとは全く違った視点での分析が興味深いです。新聞やTVニュースは毎日見ているので、本人も知らない内に考え方が影響されてしまうものです。
固くなった頭を柔らかくするためにも、全く違った視点で解説された本を読むことは必要だと思います。
納得できる点は多いけれど
本書の内容は豊富で全て紹介できないので、私が疑問に思った点を3つだけ。
1.日本は本当に大丈夫?
本書には、「利益を上げられる株式銘柄を選ぶための三つの条件」、という項目があって、とても参考になるので是非買って読んで欲しいのですが、その条件の一つに、「平均年齢が38歳以上の企業の株を買うのは避ける」というのがあります。
職場に活気の無い企業は必ず経営に失敗するからだそうです。
では、人口減少・高齢化社会の日本に対してなぜ楽観的でいられるんだろう。
2. 本当に中国は崩壊するのか?
長谷川慶太郎さんはかなり前から、中国の現体制は崩壊する、と予想しています。
毎年言っているので狼少年みたいになって来ました。もっとも本のタイトル通り、大きな流れを言っているのであって、崩壊の時期がいつになるかは言っていませんが。
3.もう戦争は起こらない?
情報化が進んだ世界では、短期間の小さな紛争はあっても、それが国同士の大きな戦争には絶対にならない、と断言しています。
エコノミストらしく経済合理性から説明していますが、人間はしばしば不合理な行動をする動物なので、そうだろうか、という疑問はぬぐえませんでした。本当に、大きな戦争が起こらない世界になったら嬉しいですが。
著者は、「アメリカ・日本・ドイツの三ヶ国には明るい未来が待っている」と分析しています。その分析は具体的なデータと資料、インサイダー情報が元になっています。
日本経済の先行きに悲観的な私でも、読んでいて元気が出ました。投資に興味がある人はもちろん、日本の行く末や世界情勢に不安を持っている人は本書を読むことをおすすめします。