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限りなく棒に近い名演 : 岸部一徳の魅力

NHKドラマ『聖女』の話が続いたのでついでに。
ついでと言ってはナンだけど。
岸部一徳って良い役者だなあ、と改めて感じたので。

 

相変わらずの存在感

『聖女』に弁護士役で出ていた岸部一徳さんが相変わらず良い味を出していた。セリフ回しはまさに棒丸出しだし、演技も一本調子で決して上手いとは思えない。
しかし何とも言えない存在感がある。不思議な役者である。

 

ヒムセルフ型の俳優

舞台

役者には、役柄に自分を近づけていくタイプと、役柄を自分に引き寄せるタイプの2種類がある。

岸部一徳さんは間違いなく後者で、後者のタイプは評価されづらいのだが、岸部さんレベルになると錚々たる映画監督達からも高い評価を受けている。

岸部一徳さんが高い評価を受けるのは『聖女』を見ていても良く分かった。彼がいるだけで、ドラマに複雑な味わいが出てくる。奥行きが深くなるのだ。

 

声の良いは七難隠す?

ある俳優*1がラジオで、「役者にとって一番大事なものは?」という質問に対して、「声」と答えていた。理由は忘れた。ラジオだったからリップサービスでそう答えたのかもしれない。

岸部一徳さんは魅力的な声の持ち主だ。
下手なセリフ回しも、彼の声の良さに隠れ、心地よく聞いていられる。
そういう意味では、確かにあの俳優の答えは正しかったのかもしれない。

 

官房長!

警官

多くの映画・ドラマに出演し、数々の受賞歴を持つ岸部一徳さんだが、有名な役柄の一つは間違いなく『相棒』の警察庁長官官房室長、小野田公顕役だろう。

残念ながら『劇場版 II』のラストで刺殺されてしまい、もう出演していないが。

主要登場人物を殺してしまい、マンネリを防ぐというのはアメドラでも良くある手法だが、殺す人物を間違えると一気にドラマの持つ力が減衰してしまう。

『相棒』の場合はまさにその罠にはまってしまったように思う。岸部一徳さんのような役者は、いなくなってからその存在感の大きさに気付くタイプの役者だ。

『相棒』は岸部一徳さんがいなくなった事で、彼の醸し出す存在感を失い、ドラマを豊かにする重要な味わいの一つを無くしてしまった。

 

ギター

一説には、沢田研二さんのコンサート・ツアーに参加するため、スケジュールが取れない為の降板だったという噂も出ているようだ。

そうだったとしても、殺すことは無かった。刺されて入院後、警察庁を退職させて1クール休ませるのでも良かった。

その後、関連団体に天下りさせれば新たな展開を作れたのに、と残念に思う。警察庁のエリートなんだから、天下り先なんてドラマ展開に都合の良いものをいくらでも作れる。

まあ、好きなドラマから名脇役がいなくなって残念、という『相棒』ファンの愚痴なんですけどね。

『聖女』で久しぶりに岸部一徳さんの演技を観て、やっぱりこの人は棒じゃ無くて名演技をする役者なんだなあ、と改めて感じたのでした。

 


*1:名前は失念した。