平成少数派の生活と意見

ネットの片隅でどうでも良いことを呟く

吹替えが駄目だという人は『アリー my Love』を一度観てみるべき

キャリスタ・フロックハート

 

断然、字幕派

海外作品、特に映画を観る時、字幕版を観るか吹替え版を観るか、どっちにするかと議論になる事はありませんか?

私は断然、字幕派です。役者の実際の声を知りたいし、どんな演技をしているのか感じたい。例え知らない言語でも、セリフ回しは演技の重要な一部だから。言葉が分からなくても、受け取れるものは多いように思う。

そんな字幕派の自分でも、吹替え版の方が良い、と断言できるドラマがあります。『アリー my Love』(原題:Ally McBeal)です。

 

一世を風靡したコメディドラマ

アリー my Love』はアメリカで1997年から2002年まで、5シーズンにわたって放送されたコメディドラマシリーズ。日本ではNHK総合の海外ドラマ枠で放送されました。

脚本を書いたデイヴィッド・E・ケリー*1は、政治を含むタイムリーな時事ネタを多く織り込んでいます。その為アメリカの大企業では、『Ally McBeal』が放映された翌日の会社で、挨拶代わりにドラマの内容について話すのが流行したそうです。

全盛期にはその位の人気ドラマでした。数多くの賞も取っています。

アメリカらしく、気の利いた会話で笑わせるので、間の取り方一つ間違えるとぶち壊しになるのだけれど、演技力はもちろんの事、間の取り方も達者な役者が揃っています。

こういうドラマを見ると、アメリカエンタメ界の裾野の広さと層の厚さを感じずにはいられません。

若き日のロバート・ダウニーJr.やボン・ジョビも出演しています*2。ロバート・ダウニーJr.は今やハリウッドの大物で、アイアンマンやシャーロック・ホームズ、アベンジャーズの主演としても大活躍しているのはご存知の通り。

しかし、『アリー my Love』に出演していた頃のロバート・ダウニーJr.は薬物依存に苦しんでおり、コカイン所持で再逮捕された為、番組を途中降板しています。

ロバート・ダウニーJr.の予期せぬ降板により脚本を変えなければならなくなり、その事でドラマの魅力が減衰し、寿命を迎えたと言う人もいます*3

 

魅力的な人、汝の名は Ally McBeal

アリー my Love』の大きな魅力の一つは、何と言っても主人公の女性弁護士、アリー・マクビールです。その人物造形は見事。

彼女を取り巻く恋愛模様や法廷での活躍を描いたドラマ、と言うとありがちに感じるけれど、その辺のドラマのような陳腐な描き方はしていません。それに、脚本家が元弁護士ですからね。法廷や弁護士事務所の裏側も押さえるところはきちんと押さえています。

主役のアリー・マクビール役はキャリスタ・フロックハート。見事な演技をみせています。今はハリソン・フォードの奥さん*4として、仕事より安らかな家庭生活を送ることを選んでいるそうです*5

 

難易度の高い吹替え

コメディドラマ、しかも会話が重要なドラマなので、山場になるとアリー・マクビールは早口でまくし立てます。それに合わせて吹替えをするのは相当難しいのだろうという事は素人でもわかります。

アリー・マクビールの吹替えは女優の若村麻由美さん。無名塾出身の演技派女優として有名ですが、このドラマでの吹き替えも見事です。

若村さんは吹き替えの準備のために家で練習を繰り返し、ドラマが終わるまでに5台のビデオデッキを潰したそうです*6。ビデオデッキというところに時代を感じますね。

それだけ練習に打ち込んだだけあって、完全に主演のキャリスタ・フロックハートと一体になっていて、全く違和感を感じません。キャリスタ自身が日本語で演技をしているかのようです。観ていて、吹替えの方がしっくり来る程です。

キャリスタ・フロックハートは決して下手な女優ではありません。むしろ地道にキャリアを積んだ演技派女優です。それでも、日本語版の方が演技が上手く感じる程、見事な吹替えを披露しています。吹替えをバカにしている人にこそ、是非観て欲しいです。

 

今の日本にこそピッタリなドラマ

アリー my Love』の主人公アリーは、恋に仕事に悩みます。時事ネタは今観ると古くて笑えないかもしれませんが、女性の社会進出が政権課題にまでなっている今の日本では、アリーの悩みに共感する人が多いんじゃないでしょうか。

残念ながら吹替え版じゃ無いですが、Huluでシーズン1の第1話を無料で視聴出来るみたいです。

 

 

気に入ったら、是非DVDで吹替え版の方を観てみてください。レンタル料金(あるいは購入料金)以上の満足を得られるドラマだと思います。あ、使われている音楽の趣味も良いですよ*7

 


*1:元弁護士。奥さんは女優のミシェル・ファイファー

*2:ロバート・ダウニーJr.はシーズン4、ボン・ジョビはシーズン5の出演。この他にも多くの有名スターがゲスト出演で色を添えた。

*3:個人的にはロバート・ダウニーJr.に関係なく、ドラマ自体が寿命を迎えたんだと思う。質の高いコメディードラマを続けるはその位難しい。競争が激しく、数字にシビアなアメリカで5シーズン続いただけでも大したもんです。

*4:ハリソン・フォードがいつまでも若いのは年の離れた若い奥さんと再婚したからかも。

*5:素晴らしい女優さんなだけにちょっと残念な気もする。大きなお世話だけれど。

*6:メレンゲの気持ち』に出演した時、ご自身で言っていました。

*7:と、言うか音楽の良さはこのドラマの売りの一つです。見事にストーリーに合わせた素晴らしい音楽が流れます。決してドラマに合わせて新たに作った歌じゃ無くて、スタンダード・ナンバーです。ストーリー展開に上手くマッチした曲があるんですね。この辺にも、アメリカエンタメ界の幅広さを感じます。まあ、曲にインスパイアされてストーリーを作ったという事も何度かあるのでしょうが。