平成少数派の生活と意見

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BABYMETALと共和党のジレンマ

ライブ

 

ごめんねBABYMETAL

アイドルは職業差別を受けている。そう自分で書いておきながら、BABYMETALの事を侮っていた。『アイドルとメタルの融合』と聞いて、興味を持てなかった。自分はアイドルに対して偏見を持たず、フラットな目で見る事が出来ると思っていたのに。BABYMETALを、どうせキワモノだろう、と思っていた事を正直に告白しなければならない。恥ずかしい事だけれど。

 

 

しかし、先日NHK総合で放送された『BABYMETAL現象 ~世界が熱狂する理由~』を観て驚きました。凄いじゃん。ちょー凄いじゃん。

番組では、イギリスのメタル専門の有名雑誌社でカメラマンに挨拶しているBABYMETALメンバーの様子も流された。日本のアイドル風挨拶にカメラマンが戸惑っていて、通訳の人に「これが彼女達流の挨拶なんです」と補足説明されて、「お、おう・・・」という感じになっていたのには笑った。

メタル専門誌とのことだったので、普段は男くさい連中ばかりを相手にしているはずで、BABYMETALをみて、まだ子供じゃん、と驚いたのではないだろうか。驚くのも無理は無い。実際にBABYMETALはまだ子供なのだ。

しかしその子供達がとんでもない事をしている。番組を観た率直な感想を言えばそうなる。

 

ライブこそはすべて

BABYMETALの素晴らしさは、その圧巻のライブを観ればわかる。私はライブが素晴らしいアーティストは無条件にその実力を評価する事にしている。質の高いライブを行なうにはスタッフを含めた総合力が必要だからだ。
All You Need Is Live.

計算し尽くされたそのライブを観れば、海外の専門家がBABYMETALに対して「知性」という言葉を使う理由が良く分かる。そこにはメタルの様式美だけでは無く、能や歌舞伎の純日本的な動きや日本風アイドルダンスも取り入れられている。

そして、BABYMETALについて語る時に必ず言われるバックバンドの能力の高さ。



世界でヘヴィメタル・ブームが去った90年代でも日本ではメタルは高い人気を誇ってきたが、BABYMETALはいわば日本の強固なメタル文化が産み落とした推移の結集ともいえる。
ただそれだけでなく、日本が誇る実力派ミュージシャンたちが変化球的に世界を唸らせるプレゼンテーションの場と言っても過言ではないのだ。


ボーカルの能力の高さにも触れないわけにはいかない。口パクか?と思わせる程上手い。ライブであそこまで上手く歌えるからこそ、海外でも受け入れられたのだろう。久しぶりに、ライブに行ってみたい、と思わせるバンドに出会った。

 

立ちはだかる多くの壁

今のところBABYMETALは上手く行っている。しかし、越えなければならない壁はまだ多い。海外ではBABYMETALについて、真のメタルなのか偽のメタルなのかという論争が起こっている。日本のバンドが海外紙で論争を起こす事自体今まで無かった事だが。

メガデスのギタリスト、マーティ・フリードマン氏も言っているが、メタルというのは狭くて排他的なジャンルだ。しかし、時代と共にどんどん純化して行ったその世界で、全くの異分子としてBABYMETALは登場し、論争を巻き起こし、そして成功している。



まず、語らなくちゃいけないのは、彼女たちがある偉業を成し遂げているということだよね。それが「言葉の壁」の問題。海外の人って基本的に、母国語じゃない音楽を聴かないんだ。日本人は英語の曲でも受け入れるけど、海外の人は「言葉がわからないから、いいや」って放り投げちゃうのが普通なんだ。

BABYMETALは言葉の壁を軽々越えた! マーティ・フリードマン★鋼鉄推薦盤 | エンタメNEXT - アイドル情報総合ニュースサイト

 

 

BABYMETALと共和党のジレンマ

共和党ではティーパーティをはじめとして右派の力が強い。その為、共和党の大統領予備選で勝つ為に、候補者は政策的に保守派に擦り寄らざるを得なくなる。しかし、保守的すぎる政策になった為に本戦では勝てない。大統領選で勝つ為には穏健派でいる方が有利なのだが、それでは予備選で負けてしまい本戦に出られない。

このような事例は他にもたくさんあって、私は勝手に共和党のジレンマと呼んでいる。BABYMETALがこれからどういう戦略で進むのか知らないが、今よりメジャーになる為にはメタル色を薄め、よりポピュラー・ミュージック色を強める必要があると思う。

しかしそうなった時に今までのファンはどういう反応を見せるのか。それ以上に、そもそもメタルを愛しているバックバンドのメンバーやスタッフは納得できるのか。メタルという狭い世界で成功したBABYMETALがより広い世界で成功する為にはかなり難しい舵取りが要求される事になるのは間違いない。

まずはある狭いマーケットで勝負して勝ち、ブランド力を高めてからより広いマーケットに進出して行く、というのは企業でもよくある戦略だ。BABYMETALがそのような戦略で進んで行くのか、あくまでメタルという狭いジャンルにこだわっていくのか、興味深い。

特にメタルを愛しているスタッフには色々な思いがあるだろうが、個人的には、より広い世界での成功にチャレンジして欲しい。BABYMETALにはチャレンジする資格があると思うし、成功する可能性もあると思う。そう期待させるバンドであることは間違いない。

ところで、NHKで放送された番組。日本から遠く離れたロンドンで、外人さんが「いじめぇーだめぇー」と歌っている姿はなんともシュールな画でした。